【カラスの親指】最後の最後までどんでん返し!【感想】

本紹介

カラスの親指

騙し騙されるフィクションの世界
そこにあなたも巻き込まれる!

タイトル:カラスの親指
著者:道尾秀介
初版発行日:2008/7/22
ジャンル:ミステリ
2012年に阿部寛さん主演で映画化!

おすすめな人
・どんでん返しが好き
・テンポの良い作戦を読みたい

あらすじ

詐欺師の「武沢」は同じ詐欺師の「テツさん」と詐欺を働きながら同居していた。
だが、ある日唐突に、火事により帰る部屋を失くしてしまう。
なんとか生活を立て直しかけた武沢とテツさんだったが、スリを働く少女「まひろ」を助けたことにより、なんと彼女が家に転がり込んでくることになった。
それだけでなく、まひろの姉である「やひろ」と、その彼氏である「貫太郎」まで居候することになり、奇妙な共同生活が始まった。
武沢には姉妹の母親を死に追いやってしまった過去があり、更に武沢によって刑務所送りにされていた「ヒグチ」の報復の影がちらつくようになる。果たして5人はそれぞれの人生にどのような決断を下すのだろうか。

コメディチックな会話と奇妙な同居生活

この小説を読んで特に惹かれたのが、テンポの良いコメディチックな会話です。
特に冒頭の武沢とテツさんのやりとりが面白く、つい夢中になって読んでしまいました。

お風呂で適当にkindle内の作品を漁って辿り着いたのですが、気がつけばすっかりお湯が冷めていました。

あやうく風邪をひくところ!

そして中年男の生活に、年若い少女が加わります。更にその姉と彼氏、野良猫までも。
出自も性格もバラバラな5人と1匹があっという間に一つ屋根の下で暮らすことになり、そのドタバタ劇からも目が離せなくなります。

しかし、武沢がまひろたちを受け入れたのは、母子家庭だった彼女たちの母親を間接的に殺してしまった過去があるから。
そんな暗い想いと無茶のある生活が良い具合に混ざり合い、続きを気にならせます。

これでもかと張り巡らされた伏線

最後にドドンと回収されるのですが、驚くほどの数の伏線がこの作品には用意されています。台詞の一つ一つに後々気付かされる意味があり、一体どうやって構成を練ったのか非常に気になります。

また、普段の掛け合いの中にもちょっとしたすれ違いによる面白さが盛り込まれていて、なんだかアンジャッシュのコントのような空気を感じました。

「お客さん。さっきの、カモでしたよね」
 武沢はぎくりと顔を前に向ける。
「……何のことだよ」
「ありゃ、サギなんかじゃないですよ、お客さん」
 ますますわからない。
「だって鷺はほら、身体が真っ白でしょ? でもさっきのやつは、茶色かった」

カラスの親指/道尾秀介

詐欺を働いた直後の武沢と、タクシーの運転手の会話です。武沢はてっきり自分の悪事を見抜かれたのかと思いますが、運転手はただ窓の外に見えるカモの話をしているだけ、といった会話です。何気ない会話にも工夫が凝らされていて、読者を飽きさせないようになっています。

私は特に、テツさんからのお礼メールをまひろからのものだと勘違いするところが好きです。

想定できないオチ

面白いと評してきたこちらの作品ですが、終盤に差し掛かった頃、やはり型にはまった作品だなと感じました。失敗と成功の繰り返し。読者の想定内に進んでいく展開、そんな風に思い、せっかくここまで読んだのに……という感覚にも陥りました。
しかしその感覚は、主人公である武沢も抱いていたのです。

大きなオチに繋がるので語れませんが、読者のそんなマンネリに辟易する感情さえオチに繋げていく展開は、見事としか言いようがありません。プロ作家の底力を見せつけられた気がしました。

最後にドミノ倒しのように様々な事柄が繋がっていくのですが、ここでよく生じる「あれ、誰が何をしたんだっけ?」という混乱も最小限に抑えられています。綺麗に物事が繋がっていくんですね。

一体どうやってこんな構成を練っているのか、本当に疑問に思う作品でした。
実際に面白いのか? と思う方は、一度冒頭を読んでみてください。
きっと惹き込まれていくことでしょう。

アベちゃんの映画も観たい!

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