【ハサミ男】殺人鬼を追う殺人鬼を描く【感想】

本紹介

ハサミ男

ハサミ男を追うハサミ男
美少女殺しの真犯人はいったい誰なのか?

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タイトル:ハサミ男
著者:殊能将之
初版発行日:1999年8月
ジャンル:ミステリ

1999年にメフィスト賞受賞・2005年に映画化作品!

おすすめな人

・シリアルキラーVS警察ものが好き

・緻密に練られたミステリが好き

あらすじ

美しい少女を殺し、その首にハサミを突き立てる殺人犯――ハサミ男の犯行と思われる3人目の死体が発見された。十六歳の女子高校生、樽宮由紀子。彼女を殺したのはハサミ男であると、世間の誰もが信じて疑わない中、それが別人による犯行であることを知っているのは、ハサミ男自身だった
「医師」に助言され、樽宮由紀子を殺した真犯人を追うハサミ男。そして犯罪心理分析官、堀之内を主体に警察も動き出す。限りなくハサミ男の犯行と思われる今回の事件、そして当のハサミ男は何者なのか。事件は思わぬ真実と結末に収束する――。

真犯人を追うハサミ男

犠牲者となった樽宮由紀子は、実際にハサミ男のターゲットでした。
冒頭からハサミ男は樽宮由紀子を尾行し、家族構成を調べ、都合よく殺害できそうな場所を探します。そしていざ犯行に及ぼうとしたその日、ハサミ男は死体となった彼女の第一発見者となるのです。
死体の状態はハサミ男のこれまでの犯行と酷似しており、当然周囲はハサミ男の第三の殺人であると疑いません。
しかし堪らないのは冤罪を着せられそうになっているハサミ男自身。リスクを負うことを覚悟しつつ、樽宮由紀子殺しの真犯人を探します。

しかし、タイトルにもなっている「ハサミ男」の名前も冒頭では語られません。ハサミ男の視点でありながら、その詳細は不明なのです。ハサミ男は何者なのか、そして実際に樽宮由紀子を殺したのは誰なのか。400ページを超える決して短くない長編小説ですが、真犯人が気になり、特にラストは一気読みでした。
最後のネタバレ、そして怒涛の展開と真犯人。予想外の終着点に、読後には感嘆すること間違いなしです。

作者の知識量・技量がすごい

「何回繰り返せば、ぼくの話を理解していただけるのかな。きみが死を望もうが、生を願おうが、そんなことはきみの実際の生死とはまったく関係がない。死はきみの内面とは無関係にやってくる。それが<現実>だ。きみの意思に従って、あるいは意思を裏切って、何かが起こるというのは、たんなる幻想だよ」

ハサミ男/殊能将之

スタンドマイクをはさんで、ハサミ男Aがハサミ男Bに話しかける。「自分、おれの心のなかの怪物なんか?」「自分こそわしの心のなかの怪物やで」「嘘つけ」「なんやと」「このドアホ」殴り合いになる。

ハサミ男/殊能将之

ハサミ男には自殺願望があります。
そして自殺に失敗するたびに面談相手となるのが「医師」です。
彼は博識かつ上から目線でハサミ男に説教をします。前者は「医師」が自殺未遂のハサミ男に自殺について説いている場面の台詞です。

そして後者は、ハサミ男の犯行について語るワイドショーを見たハサミ男の奇妙な妄想です。

小難しいだけでなくコミカルな描写も使いこなす作者の世界に圧倒されました。
巻末には参考書や引用文献も多く記されており、その引き出しの多さを感じます。
タイトルを見ただけでは、「噂」のような都市伝説を主体にした作品を想像しましたが、この作品にオカルトを臭わせるものはなく、シリアルキラーものながらリアルな内面が描かれていました。
ただ、最後に丁寧に説明されているのですが、それでも私にとって少し難解なオチでした。
その点では、オチを知って再読して更に味が出る作品だとも思います。

もう一度じっくり読みたい作品!

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