【アルジャーノンに花束を】ラストの一文で泣ける【感想】

本紹介
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アルジャーノンに花束を

タイトル:アルジャーノンに花束を
著者:ダニエル・キイス(Daniel Keyes)
訳者:小尾芙佐
ジャンル:SF
初版発行日:1966年3月(長編版)

おすすめな人
知的障害者の考えに興味がある人
深いヒューマンドラマが読みたい人

あらすじ

精神遅滞者のチャーリイ・ゴードンは、32歳になっても6歳児程度の知能しか持っていない。
そんな彼の気を引いたのは、賢くなる手術だった。
賢くなって周りと同じような話ができるようになりたい。そう思い、チャーリイは手術を受けた。
術後、彼は以前とは比べ物にならない知能を手に入れることに成功したが、彼を待ち受けていたのは明るい希望だけではなく、人間の持つ悪意とあさましさだった。

いわずとしれた名作

主人公はチャーリイ・ゴードン。
ではアルジャーノンは誰かというと、実験動物の白ネズミです。
アルジャーノンはチャーリイと同じ手術を受け、突出した知能を獲得した科学の賜物です。
そしてIQ70だったチャーリイは術後飛躍的に知能を向上させ、180を超えるIQの持ち主となったのです。
しかし賢くなった彼は自問し苦悩します。
自分は科学者の実験動物に過ぎないのだと。彼らは自分が思い通りに従うことを望んでいるのだと。

術後の彼は、また周囲の人間とも噛み合わなくなってしまいました。
パン屋の同僚は、彼を馬鹿にして笑っていましたが、精神遅滞者だったチャーリイはそのことに気がついていませんでした。
また、術後にチャーリイが恋心を芽生えさせた女性も、彼が自分の知能を超えてしまえば、自分をつまらない人間だとみなすことを危惧し、距離を置こうとします。

以前の彼は、周囲の人間はみんな自分のことが好きだと信じていました。
しかし賢さを手にしてから、人間のあさましさ、汚さ、悪意を知り、孤独に陥るようになってしまったのです。

チャーリイは幼い頃から周囲と同じ知能を得るように乞われてきました。
そのために母親は、彼を手放すことさえ選んでしまったのです。
ようやく得た賢さ。
しかしそれは本当に彼を幸せにするものだったのでしょうか。
何も知らなければよかったのか。
この作品は深い問いを読者に投げかけます。

チャーリイの経過報告

どうしてかというとぼくわこれまでずーとかしこくなりたくてばかわいやでぼくのお母さんわキニアン先生みたいにべん強しろしろといつもいっていたけれどかしこくなるのわとてもたいへんでキニアン先生の組でいろんなことをならてもすぐ忘れてしまうのです。

恩知らずに聞こえようが、私がここで憤懣やるかたないのはそれなのだ――つまり私をモルモット扱いにする態度である。現在のような私を作りあげたという、あるいは将来、私のような人たちも本当の人間になれるという二―マーの口癖である。
彼が私を想像したのではないという事実をどうしたら理解させられるだろう?

アルジャーノンに花束を/ダニエル・キイス

この小説は、チャーリイ自身が書いたけえかほうこく、つまり経過報告という形式を取られています。
上記の文が表す通り、前半は平仮名だらけで句読点もまともに打たれておらず、非情に読みづらいものです。
しかし後半は、術後、飛躍的に知能を向上させたチャーリイの文になります。
チャーリイは手術によってまるで別人となったのです。

この経過報告を辿り、私たちは彼が賢くなっていく経過を本物のように味わうことができます。面白い手法、また非常に優れた翻訳だと感じました。

手術は成功だったのか。はたまた……。
知能に翻弄されるチャーリイの気持ちが痛いほど胸に刺さり、最後の一文では涙を止められません。
とても残酷ですが、人間味の溢れる物語です。
まだ読んでいなければ、ぜひぜひ一読してみてください!

読後は声を出して咽び泣いてしまいました。

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