【死刑にいたる病】シリアルキラーの底知れぬ狂気を描く【感想】

本紹介

死刑にいたる病

冤罪を証明してほしい――。
その言葉はどこまでが真実なのか。
真実とはいったい何なのか。
全てを知る頃には、あなたも彼の狂気に魅せられている。

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タイトル:死刑にいたる病
著者:櫛木理宇
初版発行日:2017/10/19
ジャンル:ミステリ
映画化作品

2022/5/6に阿部サダヲさん、岡田 健史さん主演で映画公開!

おすすめな人

  • 犯罪者の心理に興味がある
  • どんでん返しが好き

あらすじ

かつての優等生、筧井雅也は受験に失敗し、「低レベル」な大学で学生生活を送っていた。
友人もおらず、上手な人間関係を築くことが出来ずにいる彼の元に、一通の手紙が届く。
それは連続殺人犯として逮捕された過去の知人、榛村大和からの手紙だった。
意を決して面会に赴いた雅也に、榛村は言った。
九件の殺人事件で立件されているが、九件目の犯人は自分ではないと。
死刑判決が覆ることはないが、その一件の冤罪を証明してほしいと。
果たして彼の訴えは真実なのか、なぜ榛村は雅也に依頼をしたのか。
雅也は調査を始めるが、それは思わぬ真実を次々と暴くことになる。

榛村大和というキャラクター

・不幸な生まれなら、人殺しになってもいいんですか? 違うでしょ。
・運が悪かった、という印象が強いんですよ。あいつに関してはね。
・わたし、新井(榛村の前の名字)くんだって被害者だと思うんです。

死刑にいたる病/櫛木理宇

これらはどれも、榛村を知る人たちの言葉です。
養育能力のない母親のもと、度々変わる養父たちに虐待されて彼は育ちます。
そして結果的に多くの少年少女を殺害した榛村に対し、周囲の人々は様々な意見を持ちます。

意見は違えど、彼らに一貫しているのは、榛村について喋りたがるということ。
不思議な「引力」を持ち、良くも悪くも他人を引き付ける立ち居振る舞い。サイコパスでありながら巧みに人の心に滑り込んでいく。
そんな彼自身が動くことは、物語の中でほぼありません。雅也に手紙を出し、拘置所でただ面会をして会話をするだけ。実際に動くのは雅也をはじめとする周囲の人間たち。
この構成も、榛村大和のキャラクターを象徴しているように感じられました。

ラストにかける怒涛のどんでん返し

読み始めた当初は、ただ雅也が榛村の生涯をたどり事件の真犯人を探っていくだけの物語のように思えていました。
榛村の不幸な生い立ちを連ね、歪んだ性癖を抱いて大人になったシリアルキラーの不憫さを描いているのかとも。

しかし物語が進むにつれ、その考えが甘いことに気づかされました。
榛村自身と、過去の榛村をとりまく人々、そして雅也自身の関係性。これらが雅也の視点から一つずつ明らかになり組み合わさっていく様子。
そして意外な真実が更に裏返され、誰が敵か味方かもわからなくなっていく。
私自身、ミステリが苦手なのですが、この作品は続きが気になり一気に読み進められました。

まとめ

最初は、映画化している話題作だから、という理由だけで購入しました。
ですが読み進めていくごとに、キャラクターの人間臭さへの共感や、ラストに向けてどう収束するのかが気になって仕方なくなる一冊でした。
暴力表現があるので苦手な方は注意ですが、静かな狂気に翻弄される感覚を是非味わってみてください。

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