【web小説】死神さんと、俺。【感想】

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タイトル:死神さんと、俺。
著者:にわ冬莉 さん
ジャンル:現代ドラマ
文字数:5,925文字(23/5/17 時点)

死神さんと、俺。(にわ冬莉) - カクヨム
みんな、生きろ。

あらすじ

ある日、俺の前に死神が現れた。
だから慌てることなく言ってやったんだ。
「ああ、いいよ。俺の魂なら好きに持っていきな」
ってな。
なのに、いつまで経っても俺の魂を取っていこうとはしないどころか、
「泣いて喚いて絶望に打ちひしがれた人を連れて行きたいのでぇ」
って、お前、性格悪すぎだろ!

(カクヨム)

感想

序盤では、よくある生意気な死神少女のお話だと思うかもしれません。
けれど、その実まったく違う作品でした。ともすれば泣きそうになりました。
この作品での死神は、少女の声をしていながら形がありません。黒いもやもやとして主人公の前に現れ、そして幸せになったところで魂を持っていくことを宣言します。

主人公は不幸な境遇ではありませんが、不幸な感性を持っています。それは多かれ少なかれ私たち誰もが持っている漠然とした不安に繋がっています。

 放棄するのは「嫌なこと」だけでいいんだけどな、ホントは。
 けど、嫌なことそれだけを放棄できるかっていうと微妙で、結局はそれって他と繋がってたりするわけじゃん? そこだけをうまいこと切り取るなんて、至難の業でさ、なんだろ、体の一部にガンがあっても、切り取れる場所じゃなかったらうまく付き合っていくしかない、っていう、あれと似てる。

嫌なことを切除不能ながんに例えているのが、非常に的を射ている表現でした。
また、帰るべき場所はあるけどそこは「場」であって「HOME」ではない。そして「帰りたいなぁ」と思う心境が痛いほど染み込みました。
短編ですが感慨深く、心に残る作品でした。

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