【一九八四年】究極の監視社会を描く【感想】

本紹介
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一九八四年

タイトル:一九八四年
著者:ジョージ・オーウェル(George Orwell)
訳者:高橋和久
ジャンル:SF
初版発行日:1949年6月8日

おすすめな人
重厚なディストピア小説が好きな人
思想の在り方について考えたい人

あらすじ

<ビッグ・ブラザー>率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は以前より、完璧な屈従を強いる体制に不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるのだが……。

一九八四年(裏表紙)/ジョージ・オーウェル 

限度を超えた監視社会

ウィンストン・スミスの生きる1984年のオセアニアは、究極の監視社会下にありました。
外はもちろん、部屋の中にはテレスクリーンが設置され、常に姿も声も「思考警察」によって監視されています。

戦争は平和なり
自由は隷従なり
無知は力なり

偉大なるビッグ・ブラザーを崇拝する党は3つのスローガンを掲げ、僅かでも反逆の意思を嗅ぎ取ると、その者を消してしまいます。目をつけられた者たちがどんな末路を辿るのかウィンストンを含め皆知りませんが、彼らは過去から今まで存在しなかった人間として抹消されてしまうのです。たとえ口にした言葉が寝言であっても、それを聞きつけた我が子に密告され、捕らえられてしまうのです。

ウィンストンは真理省(ミニトゥルー)で働いています。仕事は、過去を改ざんすることです。それは政府によって都合の悪い過去を消し去るだけでなく、未来はAとなるだろうと公言していながら将来にBの結果が実現していれば、その過去を改ざんします。つまり、AではなくBと言った、という風に書き換えるのです。
仕事の合間には「二分間憎悪」の時間が設けられます。反逆者たちの中心人物とである「ゴールドスタイン」を人々がひたすら憎み罵声を浴びせる時間です。まるで狂乱の光景です。

使用する言語に至っても、ニュースピークという言葉が開発されています。これはオールドスピーク(現在の英語)から、使用する言葉を大幅に消し去ったものになります。悪い思想を示す言葉があるからこそ、余計な思想を人は抱く。つまり、それを表す言葉がなければ悪しき思想を抱くこともないためです。

道にはマイクが仕掛けられ、表情一つでも疑われれば、それで人生が終わってしまう。空気感だけで呼吸のできなくなりそうな環境です。

ささやかな反逆者

連中に射殺されるだろう構うものか首の後ろを撃つだろう構うものかビッグ・ブラザーをやっつけるいつだって首の後ろを狙う構うものかビッグ・ブラザーをやっつけろ――

一九八四年/ジョージ・オーウェル

それでも党の目をかいくぐり、ウィンストンは日記にこう記します。ウィンストンは党に心酔することができない人間です。世間への息苦しさや違和感を覚えつつ、常にそれを隠しています。そんな彼のささやかな抵抗が、日記を書くことでした。
やがて、彼はやがて同じ気持ちを共有する相手を手に入れます。そして党に反逆するためなら命さえ断つという誓いを立てます。しかし、そんな彼にも一つだけ誓えないことがありました…。

読んでいるだけで気分が陰鬱とするディストピア小説です。最初は慣れない言葉に戸惑いましたが、読み進めるにつれてウィンストンの生きる監視社会に引き込まれるようにのめり込みました。
正しいと思うことを正しいと言えない社会、無知でいることが自分を守る最高の盾であり幸福となる社会。
常に人は思考し、問い続けなければならないのだと感じる小説でした。

こ、こんな社会無理だ…。

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