【超圧縮 地球生物全史】生命38億年の軌跡をたどる【感想】

本紹介
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超圧縮 地球生物全史

タイトル:超圧縮 地球生物全史
著者:ヘンリー・ジー
訳者:竹内薫
ジャンル:ノンフィクション
初版発行日:2022年8月30日

おすすめな人
生物進化に興味がある人
手早く進化の概要を知りたい人

長すぎる歴史をぎゅっと圧縮

 生命が誕生してからの約38億年の出来事を約300ページにまとめた本書。ですが実は地球誕生前から未来にかけての物語も含まれています。

むかしむかし、巨大な星が死にかけていた。何百万年も燃えつづけたので、中心にある核融合炉の燃料が尽きてしまったのだ。この星は水素原子を融合してヘリウムをつくることで、輝くために必要なエネルギーを生み出していた。しかし、そのエネルギーは、星を輝かせるだけでなく、星が自らの重力で内側にひっぱられて、潰れてしまうのを防ぐためにも不可欠だった。

超圧縮 地球生物全史/ヘンリー・ジー

冒頭のサブタイトルは「太陽が生まれた瞬間」。生物の誕生はもちろん、舞台となる地球が生まれる以前の物語から始まります。
地球は幾度も大きな気候変動を繰り返し、折角生まれた生物たちは幾度も絶滅し、またはその危機にさらされながら繁栄と衰退の歴史を繰り返します。
本書によると、人類がパンを焼くようになったのは少なくとも2万3千年前のこと。生命の38億年の足跡から見れば、人の歴史はほんのつい最近のことなのです。
人類は地球上の植物光合成による生産物のうち、四分の一をも消費しています。この独り占めにより他の数百万種の生き物の資源を奪い、時には絶滅に追いやっているのです。
しかし、人類の繁栄は今世紀が最大であり、2100年には総人口は現在を下回っていると予測しています。そしてあと数千年から数万年以上は生き残れないだろうとも。

ホモ属の特殊性と繁栄の理由

ホモ属に関して面白いと感じたことを述べます。
70万年前、ホモ属は氷河時代に対応するため、脳を大きくし、より脂肪を蓄えました。
自然界の経済法則からすれば、頭脳明晰な動物は、最小限の脂肪しか蓄えない方が得です。何故なら、食べ物がなくなっても、餓死する前に食物を発見できる知恵があるからです。
よって脂肪を蓄える必要があるのは、特に頭の鈍い動物であることが自然です。

その点において、人間は例外的な種なのです。

やってくる寒冷期に耐えるためにより脂肪を蓄えます。更に食糧難の時期には、生殖と妊娠に必要なエネルギーを得ることが不可欠となります。
そのため、繁殖に最も適した丸みを帯びた曲線を持つ女性が好まれるように淘汰されたのです。

そして人間の特徴の一つである大きな脳。つまり頭が大きいということは、生まれるのが大変であることを意味します。
人の子は極めて無防備な状態で生まれます。しかし更に成長するのを待っていたら、今度は産道を通り抜けることができません。人間の妊娠期間は、子どもと母親にとってギリギリの線を図っているのです。

生まれる子どもが無防備であり、出産に対する母体のリスクが高く、生まれてからも成長に時間がかかるという不利な点は、絶滅の可能性を高くさせます。
そこで生まれた一つの解決策が、祖母の存在でした。

一般的に、動物は生殖能力を失うとすぐに命が尽きてしまいますが、人間の女性に至っては閉経後も何十年と生き続けることが可能です。
そしてその間、より多くの子ども、つまり孫を育てることができます。自然淘汰の観点では、必ずしも親でなくとも、誰かが子どもを育て上げればよいのです。
生殖能力を失った女性は、自身が生殖を続けて娘たちと資源を争うよりも、孫たちを育てることで結果的にはより多くの子孫を繁栄させられるのです。
閉経後の女性に子育てを頼める集団は、より多くの子どもを生殖可能年齢まで育てられます。そしてこの人材を活用できない集団は滅んでいきました。まさに協力により、ホモ属の繁栄は支えられてきたのです。

これまで持たなかった観点の話や、全く知らない古代生物、そして地球の環境の物語に引き込まれます。(最も名前の短い恐竜「イ」の存在を初めて知りました)
体系的にがっつりと学ぶにはあまり向かないかもしれませんが、地球で生物として生きることの神秘や多くの生き物たちの足跡を辿ることができ、好奇心を常にくすぐられる本でした。

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