【幻夜】本当にその女を信じてもいいのか?【感想】

本紹介

おまえは俺を殺したぞ。
俺の魂を殺したぞ――。

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幻夜

タイトル:幻夜
著者:東野圭吾
ジャンル:ヒューマンドラマ、ミステリ?
初版発行日:2004年1月26日

おすすめな人
心が揺らぐヒューマンドラマが読みたい
白夜行を読んだ

2010年に深田恭子さん、塚本高史さん主演でドラマ化!

あらすじ

1995年の阪神淡路大震災。
未曽有の大災害に巻き込まれた水原雅也は、父の保険金を狙う叔父を混乱の最中殺してしまう。

その現場に居合わせた新海美冬。彼女に誘われ、殺人の罪から逃げるように、関西を去り東京に向かった。
二人の幸せのため――。その言葉を信じ、美冬に協力し続ける雅也だが、彼女には恐ろしい一面が隠れていた。

白夜行との繋がり

幻夜は大ヒット作「白夜行」の続編とされています。
白夜行は私も大好きなので深く心に残っており、途中までは同じ流れを踏襲しているように思っていました。

ある出来事から強く結びつく男女、成功していく女と、それを影で支え続ける男。しかし女を危険視し、その裏に協力者がいることを嗅ぎつけ、追い続ける刑事。今回も基本はほぼ同じ展開だと思っていました。

しかしその男女の関係がまるで真逆なのが、白夜行と幻夜です。
前者では、雪穂(女)は亮司(男)だけを心のよりどころにし、その逆もしかり。
ですが後者では、美冬(女)は雅也(男)に愛情などなく、ただ男側が女を信じて尽くし続けるという、白夜行とは正反対の関係性が描かれていました。

ここで問題に思うのが、本当に美冬=雪穂か?という点です。

正直私は、違う人間ではと思っていたのですが、終盤で次々と白夜行を匂わせる言葉や展開が明らかになっていき、同一人物だと思わざるを得なくなりました。
ただ、美冬はひたすら悪女なので、雪穂に対するような同情を覚えられない。ここまでのキャラクターだったのか?という引っかかりから、別人物の可能性を捨てきれずにいます。
単体としても十分に読めますが、前作を読んでいるといっそう楽しめると思います。

彼女をひたすら信じる男

自分では手を下していないつもりか。いいや、おまえも人殺しだ。おまえは俺を殺したぞ。俺の魂を殺したぞ――。

幻夜/東野圭吾

追いつめられた雅也の悲痛な心の叫びです。おまえとはまさしく、美冬のことです。
雅也は美冬に対する疑念を持ってもその気持ちを抑え、二人の幸せのためだとずっと美冬を信じていました。

雅也が幸せになれそうな別の道は垣間見えていたのですが、それでも彼は彼女を選んできたのです。
とても辛い気持ちになりますが、あちこちに貼られた伏線が続々と回収されるラストにはページをめくる手が止まりません。700ページを超える長編で、読み終わった時にはため息が出ました。

読後に爽快感を求める方にはお勧めできませんが、数々の謎が絡み合い見事に回収されていくストーリーを、是非味わってみてください。

胸が苦しいのに読むのが止まらない!

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