【八十日間世界一周】最後の最後まで冒険は続く【感想】

本紹介
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八十日間世界一周

タイトル:八十日間世界一周
著者:ジュール・ヴェルヌ
訳者:江口清(角川文庫)
ジャンル:文学
発表年:1872年

おすすめな人
世界を冒険してみたい人
ハラハラ感を味わいたい人

あらすじ

一八七二年のロンドン。革新倶楽部の会員で謎の金持ちフォッグ氏は、仲間と二万ポンドもの賭けをし、八十日間で世界を一周することになる。一秒でも遅れたら全財産が失われてしまう!インドから中国、日本から海を越えてアメリカへ――。
手に汗握る、奇想天外、前代未聞の旅がはじまる!

八十日間世界一周/角川文庫裏表紙

英国紳士は旅に出る

イギリスはロンドンの紳士、フィリアス・フォッグは変わり者として知られていました。
病的なほど常に同じルーティンで生活をし、その細かさは一分単位に及びます。彼に仕える従僕が解雇された理由は、ひげ剃りの湯を華氏86℃でなく84℃で準備したためでした。そこで新たにパスパルトゥーという名の青年が従僕として雇われます。
またフィリアス・フォッグは金持ちであり、名だたる紳士が加入している革新クラブに所属していました。
そこで世界一周についての話題が挙がります。「モーニング・クロニークル紙」が、世界一周を行う最短経路の予定表を掲載していたのです。

ロンドンからスエズまで、モン・スニおよびブリンディシ経由により鉄道ならびに郵船で……七日
スエズからボンベイまで郵船で……十三日
ボンベイからカルカッタまで郵船で……三日
カルカッタからホンコンまで郵船で……十三日
ホンコンから横浜まで郵船で……六日
横浜からサンフランシスコまで郵船で……二十二日
サンフランシスコからニューヨークまで鉄道で……七日
ニューヨークからロンドンまで郵船ならびに鉄道で……九日
総計八十日

八十日間世界一周/ジュール・ヴェルヌ

しかし上記は、天候による事件やあらゆる事故による遅延や欠航が起きない場合の計算。つまり一切の災難が訪れない机上のものとも捉えられます。
現代でも予定通りの長期旅行は困難かと思われますが、本書の舞台は一八七二年。時刻表通りに旅程が進む保証はより低いものに違いないのです。
革新クラブの面々が不可能だと口をそろえる中、フィリアス・フォッグは八十日間世界一周は可能だと断言します。そして自分がそれをやってのけようと宣言し、全財産の二万ポンドを賭けたのでした。
驚く仲間を尻目に、英国紳士はその場で八十日間世界一周を開始します。スーツケース一つだけを手に、まだ雇われて二十四時間も経っていないパスパルトゥーを引き連れて汽車に乗るのでした。

波乱万丈の旅

好青年のパスパルトゥーは、主人はすぐに旅行を取りやめるだろうと考えていました。信頼関係を築くにはあまりに時間が足りなかったのです。
ですがフィリアス・フォッグは真剣でした。パスパルトゥーは共に旅を続ける中で、次第にそれを感じ取るようになります。主人は一見冷徹に見えても、実は温情深く非常に魅力的な紳士だったのです。
当然、旅の中ではあらゆるトラブルが起こります。そうでなくては面白くありません。それは共に、フィリアス・フォッグの負けを常にちらつかせる要素でもあります。時に賭けだけでなく命の危機にも晒される冒険に、氏の周囲や読者はハラハラさせられますが、当のフィリアス・フォッグは絶対に慌てません。常に泰然自若(このワードが何度も登場します)とし、急ぎはしても焦ることなく目の前の課題をクリアしていくのです。
お金の力で解決する場面も多々あります。しかし、世界一周を必ず成し遂げるという未来を信じた主人公の行動は頼もしく、どんな困難が訪れても決して諦めず次の一手を練る力強さを感じさせます。

また、タイトル通りに本作では世界のあちこちの国々の様子が描かれています。
情景描写は解像度が高く、軽くその国の歴史や文化にも触れているので、当時の様子を知る勉強にもなりました。まだヨーロッパやアメリカほど発展していない明治時代の日本(横浜)の風景も細かく描写されています。
作者は同じく有名な「海底二万里」や「十五少年漂流記」の著者です。世界を旅する冒険心をくすぐられる本作は、是非一度読んでおくことをお薦めします。

ネタバレあり

絶対賭けには勝つと思っていたので、最後の方は何かの間違いかと思ってしまいました。
そういうことかと納得する最後の最後まで、ハラハラさせられる作品でした。

現代で試したらどうなるんだろう…?

コメント

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