【13階段】死刑執行へのタイムリミット!【感想】

本紹介
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13階段

タイトル:13階段
著者:高野和明
ジャンル:ミステリ
初版発行日:2001年8月6日

おすすめな人

緻密なストーリーが読みたい人
重いヒューマンドラマが好きな人

第47回江戸川乱歩賞受賞作!

あらすじ

犯行時刻の記憶を失った死刑囚。その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。だが手がかりは、死刑囚の脳裏に蘇った「階段」の記憶のみ。処刑までに残された時間はわざかしかない。二人は、無実の男の命を救うことができるのか。

13階段(裏表紙)/高野和明

死刑囚の冤罪を晴らすため二人の男は奮闘する

27歳の青年、三上純一は殺人の罪を償い、世間に戻りました。
殺人といえど当時の純一に殺意はなく、限りなく事故に近い形で相手を死に至らしめてしまいました。飲食店で食事を摂っていたところ、見ず知らずの男に言いがかりをつけられ、喧嘩となってしまいます。純一の不意の一撃でよろけた相手が運悪く頭を打ち、死亡してしまったのです。

しかし周囲はそうした事件の経緯など考慮はしてくれません。
実家に帰った純一は、自分の罪に対する慰謝料のために両親、そして弟が苦しい生活を強いられている姿を目の当たりにします。
そんな彼に声を掛けたのが、刑務官の南郷でした。南郷は純一に自分と共に仕事をしないかと誘います。その仕事とはある死刑囚の冤罪を晴らすことでした。純一は家族のためにも報酬を得るため、南郷の誘いを受け入れます。

二人が冤罪を晴らす相手、樹原という死刑囚は、事件前後の記憶を失っていました。
殺人に対する反省や、被害者及び遺族への謝罪の姿勢が見られれば、死刑は免れたかもしれません。
しかし、記憶にないことを反省や謝罪することなど不可能です。想像するととても恐ろしい状況です。

樹原が持っているのは、事件当時、自分が階段を上っていた記憶だけ。
この記憶を頼りに純一と南郷は当時の殺人事件を探っていきます。
あらすじだけで面白く、登場人物たちの関係性、深いバックグラウンドが繊細に描かれた作品です。

死刑制度と執行場面

絶対応報こそ正義である――
四七〇番の足が踏み板にかかった。
絶対応報こそ刑罰の根本義である――
その言葉を心の中で繰り返しながら、南郷は手にした麻縄を振り上げた。
たとえ市民社会が解散し、世界が滅びる最後の瞬間においても――
南郷は、黒革で覆われた輪を、四七〇番の首にかけた。
殺人者は処刑されなければならない――
「僕はやってない」
南郷の目前、目隠しの覆いの下から四七〇番の声が聞こえてきた。
「助けて――」

13階段/高野和明

南郷が死刑執行に携わった場面の描写です。無実を訴える死刑囚に、南郷は刑を執行します。
「13階段」は、死刑制度や執行時の描写が非常に丹念に描かれた作品です。文庫の最後にずらりと並んだ参考文献たちが、作品内のリアルさに寄与しています。まるで死刑執行の瞬間をこの目で見ているようで、携わる人たちの苦悩が生々しく感じられます。

まるで樹原の事件が実際に起こったものであるような感覚を覚え、作者の技術力、構成力の高さをまざまざと見せつけられました。
解説にも記されていますが、第47回江戸川乱歩賞の選考において、全会一致で大賞と推されたのも頷けます。
二転三転する濃厚なストーリーは、もう一度記憶を消して読みたくなります。

映画もあるけど、是非小説版も読んでほしい!

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