紫外線を見る力「UV視覚」

太陽光は、波長により「紫外線」「可視光線」「赤外線」の三種類に分けられます。
人の目に見える可視光線、つまり光より波長が短いものを紫外線――UVといいます。
私たちは紫外線を見ることはできませんが、多くの魚類、爬虫類、鳥類はUVを見ることができ、この能力をUV視覚と呼びます。
UV視覚は多くの脊椎動物やミツバチなどの無脊椎動物などの感覚器官の一部ですが、哺乳類の進化の過程で失われました。しかしマウスやラットなどの一部のげっ歯類はUV視覚を保持しているため、完全に失われたわけではありません。
そして昼行性のデグーは視覚で近紫外線を認識できることが明らかになりました。
デグーとは

デグーは草食性で、主に草や樹皮、種子、果物などを食べるげっ歯類の動物です。
体長は尻尾を含めずに約12~20㎝、尾を含めると25~31cmほどで、体重は350g以下です。最大10匹の群れで複雑な地下トンネルを掘り共同生活を送ります。
ヨーロッパなどではペットとして比較的があり、日本でも近年人気を獲得しています。
このサイズのげっ歯類の中では知能が高く、人間の三歳児並みとも言われており、オスも育児に参加する動物です。
デグーの尿は紫外線を反射する
研究の結果、新鮮なデグーの尿は紫外線を強く反射することが判明しました。反対に古い尿は紫外線をほとんど反射しません。
デグーは嗅覚だけでなく視覚によって、新鮮な尿痕と古い尿痕を区別することができるのです。
この尿痕を視覚的に検出することにより、仲間が最近通った場所や、なわばりの位置を把握することができます。デグーは聴力だけでなく視覚もラットやマウスよりも優れているといわれています。
しかし、目に見えるマーキングには欠点もあります。
同じく昼行性の猛禽類もUV視覚を持っており、フィンランドの研究者たちは、チョウゲンボウがUV視覚によってハタネズミの足跡を区別し、狩りの成功率を高めていることを明らかとしました。チョウゲンボウとは鷹の仲間の鳥で、げっ歯類の捕食者です。デグーの尿がUVを反射し、それを認識できることは一見有利ですが、却って敵に狙われやすくなるというネガティブな面もあるのです。
身を守る最終手段
デグーには捕食者から逃れる最終手段があります。
トカゲが尻尾を切って天敵から逃れる「尾切」のように、「尾抜け」と呼ばれる方法で、デグーも危険を感じた際に、皮膚の下の特定の部位で、自分から尾を切り離すことができます。
これを「degloving」といい、捕食者の注意を逸らして逃げるチャンスを作ります。しかしトカゲは尻尾を再生することが可能ですが、デグーの尻尾は一度抜けると二度と生えてくることはありません。まさに生涯一度きりの手段なのです。
引用・参考
・国土交通省気象庁
・https://www.livescience.com/animals/land-mammals/common-degu-oversized-hamsters-with-societies-governed-by-pee
・https://www.mpg.de/481902/pressRelease20030610
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